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三国志演義の訳本


 演義の訳本は、いくつも出ている。まず、小川環樹、立間祥介、井波律子によるもの。いずれも、意訳を避け、堅実に訳している。しかし、文体や表現は、三者それぞれ独自性がある。

 小川版は、講談調で古風な文体。一番メジャーかも知れない。原文に忠実で、且つ雰囲気がよく出ている。また、註釈が充実。
 分かりやすさなら井波版。一番新しく癖がない。文体が丁寧で、行替えも丁度いい。また、註釈は簡略で的確。
 立間版は、口語性、文語性のバランスが取れている。また、個々の文に無駄がなく、格調とテンポがいい。最近、改訂版も出版。


 また、村上知行の訳本がある。終始意訳で、文体も勢いがある。登場人物の一人称は、「わが輩」。隠れた名作である。
 各回は、いくつかのまとまりに分けられ、各々に小見出しが付いている。また、複数の出版社から出ているが、角川文庫版は挿絵付き。
 他には、渡辺精一の訳本がある。適度な意訳と、簡単な補足文。そして、まとまりごと、小見出し付き。(村上版と同様。)かなり分かりやすい。


<刊本の話>
 三国志演義には、実際は様々な刊本がある。有名なのは、嘉靖本、李卓吾本、毛本の3つ。この順に古い。(なお、李卓吾本の正式名称は、「李卓吾先生批評三国志」。)
 上に挙げた5つの訳本は、いずれも毛本が底本。(小川版は、一部嘉靖本で補完。)


 また、日本で最初の訳本は、江戸時代初期、湖南文山によるもの。題名は、「三国志通俗演義」。李卓吾本(の批評以外の部分)を底本とする。(若干、脚色や省略あり。)
 江戸時代後期、この訳本に挿し絵が付けられ、「絵本通俗三国志」と名付けられた。今も比較的入手容易。
 因みに、吉川英治の「三国志」は、文山の訳本を元に書かれたと言われる。

 嘉靖本の訳本は、基本的に出ていない。ネットで原文が見つかる。また、李卓吾本と嘉靖本は、あまり内容が変わらない。嘉靖本の話






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