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トウケン キョウソ
陶謙 恭祖
  
~剛直で文武に長けた領主~

 後漢の群雄。各地で活躍後、徐州を支配し、感情に任せて為政する。部下が曹操の父を殺害したため、曹操から討伐を受ける。防戦する中、呂布が曹操の地元で反乱し、曹操は撤退する。



地方官を歴任
・揚州の丹陽郡出身。家系は不詳。
・青少年期、学問を好む一方、放蕩をもって知られる。14歳になっても、絹の布で軍旗を作り、竹馬に乗り、村中の子供を連れて遊ぶ。(親分気質。)成長後、甘公という名士に見込まれ、娘を娶る。
・洛陽に行き、太学(都の国立学校)で学ぶ。その後、州、郡の役所に出仕。

・剛直で清廉潔白。節義あり。孝廉に推挙され、舒(じょ)県の令となる。(孝廉とは、官僚の候補枠。舒県は、揚州廬江(ろこう)郡。)在任時、犯罪の追及は徹底せず。(些事にこだわらない性格。)
・茂才に推挙され、盧(ろ)県の令となる。(茂才とは、官僚の候補枠。盧県は、兗州済北国。)

幽州刺史に任じられる。(異民族の地。)治績は不明。




反乱討伐
・朝廷で議郎(帝の補佐官)となる。
・皇甫嵩に従い、反乱した羌(きょう)族を討伐。大いにこれを破る。


・張温が韓遂(西方の反乱者)を討伐する。陶謙は知略の評判があり、参軍(参謀)に任じられる。公議の場で張温の作戦を侮り、辺境に流される。(なお、討伐は不首尾に終わっている。)

・後に謝罪のため、洛陽に行くこととなる。張温に会うと、「私は朝廷に対し(公を乱したことを)謝るのであって、貴方に謝るつもりはありません」と主張。(剛直な性格がよく分かる発言。)張温は、「その愚かさは、まだ治らないのか」と述べたが、以後陶謙を厚遇したという。




徐州支配
・徐州で黄巾が幅を利かせる。陶謙は、徐州刺史に任じられる。黄巾を討伐し、これを敗走させる。(やはり軍才は高い。)
・陳登を典農校尉に任じ、飢民を救えと命じる。陳登は善政し、人民を豊かにする。

・董卓が朝廷を制圧する。袁紹らが董卓を討伐し、董卓は長安遷都を強行する。陶謙は朝廷に使者を出し、帝に貢物を献上する。(配下の王朗の進言に従った。漢の忠臣という立場を明確にし、人々の支持を得る目的。)
・その後、陶謙は将軍位を授かる。更に、刺史から牧に昇進。(一方、王朗は会稽太守に就任。)
・朱儁(しゅしゅん)が董卓に反乱し、洛陽の東に駐屯する。陶謙は朱儁を援助。


・道義にこだわらず、感情のままに行動する。当時趙昱(ちょういく)という名士がおり、忠義、実直をもって知られ、陶謙はこの趙昱を招聘。趙昱が何度も仕官を辞退すると、陶謙は刑罰をもって脅し、無理やり召し出す。また、小人(利のみを重んじる者)をしばしば重用。法律、刑罰の筋を通さず、善人は害され、州内は次第に秩序を失う。(以上は正史本文の記述で、非が強調されている(曹操の敵であるため)。実際は、倫理観が大雑把だったのだろう。)

・闕宣(けっせん)という人物が、天子を自称。陶謙はこの闕宣を利用し、略奪行為を行う。後に、闕宣を殺害したという。(これも正史本文。いまいち、詳細が分からない。)




対曹操
・部下の張闓(ちょうがい)が、曹操の父(曹嵩)を殺害する。曹操は、陶謙討伐を考える。(曹操にとって、陶謙は元々敵対勢力。)
・曹操は、陶謙が強力であることを案じる。そこで朝廷(長安)に使者を出し、(徐州の軍備が大げさであると)上奏する。結果、帝は陶謙に対し、「軍備を減らし、代わりに農事に従事させよ」と詔勅。陶謙は、「賊を掃討してのち、そうします」と返答し、軍備を解かない。(以上、あまり知られていない事実。「三国志演義」のイメージとだいぶ異なる。)

・曹操が徐州に侵攻し、殺戮を始める。陶謙は、田楷(青州刺史)の救援を受け、共に曹操と対する。曹操は、ひとまず撤退する。
・曹操が再び徐州に侵攻し、同様に殺戮を行う。曹豹(陶謙の将)、劉備(当時陶謙の客将)が迎撃したが、敗れて城に戻る。やがて陶謙は発病し、劉備を徐州牧の後釜に指名する。一方、曹操は地元で反乱が起こり、撤退を強いられる。


・「呉書」によると、陶謙死後、張昭が追悼の文を書いている。「貴方は徳を備え、武力に優れ、学問に秀でておられた。剛直な性格で、温厚、慈愛の態度を貫かれた。」(呉は曹操の敵対勢力なので、あえて陶謙を称賛。しかし、ある程度の真実は含まれていると思われる。)

陳寿は陶謙を評して言う。「惑乱して憂死した。」(一貫して批判の立場。)
陳寿は更に、公孫瓉、公孫度、公孫淵、陶謙、張楊をまとめて評する。「州郡を擁しながら、一匹夫以下であり、論じるに値しない。」(陳寿は史家としての立場上、魏や漢に従わなかった者を非難。)
・范曄(後漢書の著者)は、「徐州が荒れたのは、陶謙が根本の原因」と評している。




公孫瓉 陳登


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