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并州の出来事1 変動期


異民族
 并(へい)州は、国都洛陽の北に位置。黄河が州の真ん中を横切る。また、山地の多い地域でもある。後漢帝国にとって、重要度は本来高い。
 しかし、北部、西部は辺境の地。その内外に、異民族が居住する。


 匈奴は後漢初期、北匈奴・南匈奴に分裂した。ほどなく、南匈奴は漢王朝に帰服し、并州の内部に移住。彼等の族長(単于(ぜんう)と呼ばれる)は、美稷県(西河郡)に駐在する。
 後漢帝国は要するに、多くの貴重な土地を、異民族のために割いた。それだけ、異民族問題は重大だったのだろう。

 しばらくのち、北匈奴は、漢と南匈奴に敗北。離散して滅亡する。(後漢初期。)
 その後、南匈奴の中にも、漢に反乱する者が時々現れる。しかし、涼州の羌(きょう)族に比べ、頻度は多くなかった。




董卓と丁原
 後漢後期、董卓が并州刺史に就任。(州の首都は晋陽県。)この董卓は、涼州出身の武将。強力な軍勢を抱え、任地で独自に力を蓄える。しばらくのち、河東郡(司隷)の太守に移った。
 後に、丁原が并州刺史に任じられる。恐らく、董卓の後任。

 董卓、丁原はいずれも武芸に秀でる。反乱者の討伐で活躍し、次第に台頭した人物。(なお、丁原はあまり字を読めず、官僚としての能力は不足。)
 刺史とは州のまとめ役で、本来は知識人、教養人が就任する。しかし并州は、内外に多くの異民族が住み、特殊な情勢が存在。(主に匈奴、鮮卑、烏丸。また、羌族が時々侵入。)朝廷はあえて、軍人を起用した。


 丁原の配下に、呂布という腹心あり。五原郡の出身で、抜群の武芸を持ち、騎兵の指揮に長ける。
 189年、董卓が洛陽に入り、朝廷を制圧する。まもなく、呂布は丁原を殺害し、董卓の配下に入る。
 丁原はひたすら粗野で、遠謀には欠ける。董卓の方は、計画性も備えている。呂布は恐らく、「丁原はいずれ、董卓に敗れる」と予測。早めに董卓に乗り換えた。




白波黄巾賊
 董卓は洛陽にあって、横暴を振るう。袁紹、曹操らに反乱され、長安遷都を実行する。しばらく権勢を保ったが、人望は既になく、やがて王允、呂布に暗殺される。(192年。)
 王允は并州南部の出身で、正統派の儒士。呂布は并州北部(辺境地帯)の出身。南北で気質が異なる。

 その後、董卓の旧臣李傕らが、長安を制圧。朝廷を支配する。
 次第に群雄割拠の時代となったが、この并州は、終始争奪の対象にならなかった。何かと厄介な地域だったのだろう。


 西河郡の南には、白波という谷あり。(後漢書には「西河白波谷」とあるが、正確には河東郡(司隷北部)の中部。)この白波谷には、黄巾の一団が砦を置いている。韓暹(かんせん)、楊奉らがその指導者。
 あるとき、彼等は南匈奴の於夫羅(おふら)と結託する。(於夫羅は単于。即ち族長。)共々、河内郡(司隷北東部)に侵入し、一帯を荒らし回った。

 195年、於夫羅は死去。弟の呼廚泉(こちゅうせん)が単于となり、子の劉豹は左賢王となる。(右賢王は去卑。)
 一方、帝が李傕らから逃れ、長安を脱出する。白波賊、南匈奴は、共々帝の元に参じ、李傕らと対した。(195年。)帝はやがて洛陽に帰還。


 この頃、劉豹が漢人の才女・蔡琰(さいえん)を拉致する。(蔡琰は字(あざな)を文姫(ぶんき)という。)これを側室とし、子を二人作る。
 この蔡文姫は、蔡邕(さいよう)の娘である。蔡邕は高名な儒学者で、董卓に厚遇された人物。この父娘はある意味、似た境遇を過ごした。
 後に、曹操が劉豹に身代金を払い、蔡文姫を中原に連れ戻す。




高幹の動き
 袁紹(名門貴族)が冀州を拠点とし、勢力を広げる。袁紹はあるとき、高幹を并州刺史に任じる。
 高幹は、袁紹の甥に当たる。学問、武芸いずれにも長け、自負心も強い。盛んに人材を集め、力を蓄えた。

 200年、袁紹は官渡(かんと)で曹操と対峙。(官渡は兗(えん)州。)当初は優勢だったが、結局敗れる。202年、袁紹は死去し、三子の袁尚が跡を継いだ。
 202年、高幹は袁尚の指令を受け、河東郡(司隷)に侵攻する。呼廚泉(南匈奴の単于)がこれに加勢。また、郭援(袁尚の配下)も、同時に行動を開始した。
 高幹らは各地を攻略し、曹操をおびやかしたが、やがて敗れる。高幹は撤退してのち、曹操に帰順。

 205年、高幹は曹操に反逆する。今度は黒山賊などが加勢し、河東郡はまたも混乱に陥る。しかし、曹操側は巧みに対処し、態勢を立て直した。
 翌年、高幹は作戦を断念し、壺関県(并州上党郡)に転進。城の守りを固め、楽進・李典の攻撃を防ぎ通す。しかし、曹操の本軍を前に撤退し、その後地方官に殺害される。
 曹操は、この勝利により、并州を支配下に収める。しかし、州は既に荒廃していた。




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