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本の紹介(小説1)

 三国志の小説を紹介。

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吉川英治「三国志」
吉川と横山



陳舜臣「秘本三国志」
 正史準拠の作品。史実の出来事と、それへの解釈が記される。また、随時に台詞が付加される。
 小説と解説本、両方の要素があるのだが、基本は小説である。
 登場人物の中では、曹操の描写が多い。しかし、特定の主人公はおらず、時代そのものを描いている。

 本作は、「五斗米道」(益州の道教団体)や、仏教者にもスポット。その暗躍をサイドストーリーとして盛り込み、主軸のストーリーを補完する。
 また、意外な人物の出番が多い。徐州で活動する笮融(さくゆう)や、黒山賊のボス・張燕。更に、劉焉(益州の領主)の三子劉瑁。他には、黄巾賊・異民族の人物が目立つ。
 本作はまず、地方にスポットを当て、そこから中央へと、ボトムアップに時代を捉えていく。異色の三国志である。


 なお、劉備の描き方に特徴がある。仁の人とは捉えず、したたかな面を殊更に強調。しばしば、悪人っぽく見える。(恐らく、「三国志演義」へのアンチテーゼ。)
 孔明も、天才軍師としては描かず、まず人間性にスポットを当てる。時代を見据える政治家、という面が強調される。  




北方謙三「三国志」
 基本的に正史準拠。一部、「三国志演義」の記述も取り入れる。
 ハードボイルドの大御所による、個性的な作品。淡々とした筆致をもって、活力に溢れた世界を描く。テンポもよく、読み進めやすい。

 本作は、人物描写が濃い。数多い登場人物を、上手く描き分ける。
 まず、主人公格の曹操。視野の広さ、強い意志を備える。袁紹は、曹操のライバルとして風格あり。政治、軍事いずれにも長け、冷徹さも持つ。そして、劉備も、一筋縄でいかない人物。義を重んじる反面、粗暴さも秘めている。
 また、周瑜 呂布、馬超の出番が多い。

 一方、原典(正史・演義)で記述が少ない人物も、本作では個性的に仕立てる。例えば、顔良(袁紹の武将)はだみ声設定。中盤では、「五斗米道」(道教の教団)の張衛が活躍する。


 なお、別巻の「三国志読本」も刊行。北方氏へのインタビュー、人物事典などが載っている。
 人物事典では、北方三国志の登場人物が、一人一人紹介されている。これがかなり面白い。北方氏が、三国志の人物達をどう見ているか、総覧することができる。




宮城谷昌光「三国志」
 正史準拠の作品。ひたすら、歴史としての三国志を描く。
 第一巻は、後漢の中期から始まり、三国志の時代背景をじっくり描写。王朝がどう衰退していったのか、最初に学ぶことができる。

 また、人物描写に重点がある。史実を元に、地道に掘り下げる。(想像による創作は排除。)本作の曹操は、勤勉な性格を持ち、根底に文化力を備えた人物。一方、劉備はいつも今を見据え、物事、過去に執着しない人物。両者は絶妙に対比される。
 また、曹洪、夏侯惇など、脇の人物もしっかり描く。更に、地方長官たちにもスポット。また、何進は人の良さが強調される。

 ストーリーの流れは、少しスムーズ感に欠ける。しかし、内容は重厚。既に正史を読んでいれば、当作品も興味を持って読めるだろう。正史未読者も、正史の代わりに、まず本作を読んでみてもいいかも知れない。


 また、終始正史に準拠した三国志小説は、本作以外に見当たらない。(陳瞬臣の「秘本三国志」は、所々、独自のストーリーが含まれる。)その意味でも、希少な作品と言える。
 別巻の「三国志外伝」は、十二名の人物伝。韓遂、許靖、太史慈、陳寿、劉繇(りゅうよう)らを取り上げる。(陳寿とは、正史「三国志」の著者。)かなりの良書。




柴田錬三郎「英雄三国志」
 「三国志演義」に準拠。時代小説の大御所による三国志。講談調で、終始テンポがいい。

 登場人物の性質は、端的、明瞭に描かれる。例えば、劉備は信念、強さを内に秘めた人物。曹操は生き生きした英雄。袁紹、袁術は豪気な野心家。
 また、作者のお気に入りは孔明だという。かなり力を入れて描かれる。

 本作は、どのシーンも高揚的に描いており、次々読み進められる。顔良、文醜の登場シーンなどは、かなり盛り上がる。李傕、郭汜も他作品に比べ、強敵っぽく描かれている。


 なお、本作は元々、前編・後編に分かれていた。前編「英雄ここにあり」は、北伐の前まで。(上巻・中巻・下巻。)後編「英雄生きるべきか死すべきか」は、北伐開始から、孔明死後の時代を描く。(上巻・下巻。)
 後に、前編・後編が一つにまとめられ、「英雄三国志」という題名が付けられた。




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